半導体は、狭義には、金属のように電気を通しやすいモノと、ガラスやゴムのように電気をほとんど通さないモノの中間の性質をもつ物質を指します。この物質に処理を施すことで、電気を通す/通さないをコントロールできる、いわばスイッチとして機能する素子を作ることができます。
現在、半導体の材料としてもっとも使われているのはシリコン(Si)の単結晶です。このSi単結晶の板(シリコンウェーハ)に多数のスイッチが形成され、パソコンやスマートフォンのCPU(中央演算装置)やメモリ(フラッシュメモリ、DRAMなど)といった重要な半導体部品になっているのです。
これに加え、半導体を応用した電子部品も含めて広く「半導体」という呼称が使われ、デジタル製品や輸送機器、公共インフラなど、世界中で広く活用されています。
半導体関連製品の市場規模とはどれほどでしょうか?半導体が搭載される電子機器の市場は約267兆円、半導体自体の市場は52兆円、そしてディスコが属する半導体製造装置市場は7.4兆円の規模です。
自動車産業の市場規模は333兆円であり、電子機器市場はそれに近い規模と言えます。今後EV化が進むことで、自動車産業と電子機器産業の境界は薄れていき、半導体と自動車の進化が相乗効果を生みながら、市場が増大していくことが期待されます。
出典:VLSIResearch, WSTS, SEMI, DECISION Etudes & Conseil
半導体製造工程ではシリコンウェーハ上に、精密な印刷技術を応用して素子や回路を焼き付けていきます。
回路の最も微細な部分は数nm(ナノメートル、1/1,000,000 mm)で、数mm角のIC/LSIチップの中には数十億もの素子が形成されます。量産に用いられる直径300 mmのシリコンウェーハ上に、数百から数千個のチップをつくることが可能です。
シリコンウェーハ上に回路や素子を形成する工程です。薄膜を形成する「成膜」、保護パターンを形成する「フォトリソグラフィ※、保護パターンに覆われていない箇所を除去する「エッチング」を繰り返し、素子や回路を形成していきます。
複雑なものでは延べ数百工程、数週間を要する場合もあります。高価なCPUを製造する場合は、ウェーハの価値が数千万円におよぶこともあります。
※フォトリソグラフィ:ウェーハに感光性の樹脂を塗布し、パターン状に露光・現像することにより、保護膜を選択的に生成して狙った構造の回路・素子をつくる技術。
完成したウェーハを小さなIC/LSIにするため、薄く削り、チップ状に切り離し、配線を接続する工程です。前工程を経た高付加価値のウェーハを加工するため、高い歩留まりが求められます。
ディスコはウェーハを薄く削るバックグラインディング工程、その後の強度を高めるストレスリリーフ工程、小さなチップに切り離すダイシング工程を通じて半導体の薄化、小型化に寄与しています
“モノ消費”から“コト消費”へと時代が移行し、モノづくり産業は衰退していくとも言われています。確かに「自家用車よりカーシェア」「CDやDVDより定額サービス」というように、モノを所有する機会が減少傾向にあることは間違いありません。また日本の製造業が、韓国や中国などアジア地域の企業との競争に苦戦している分野もあることも確かです。このため製造業より、IT産業やコンサルなど情報を扱う企業の方に将来性を感じる人も多いでしょう。
しかしながら、こういった“コト消費”はクラウドコンピューティングなどのIT活用の上に成り立っており、これを支えている半導体や電子部品の重要性は増す一方です。日本にはこういった需要を支える半導体・電子部品の製造装置、材料メーカが多く存在し、長年に渡り高収益な企業も少なくありません。
1980年代~90年代は、日本の電機産業を母体とした半導体メーカが存在感を示していました。しかし2001年のITバブル崩壊後、韓国や台湾の半導体メーカの台頭、半導体業界の世界的な淘汰により、日本の半導体メーカの多くが撤退を余儀なくされたことは事実です。
この顛末を「日の丸半導体の凋落」と表現するマスコミが多かったため、日本の半導体関連産業全般が衰退しているという誤解も多く聞かれるようになりましたが、先述の通り、日本の製造装置、材料メーカの中には世界の中でも大きな存在感を示している企業も数多くあり、また、半導体の需要が減少しているわけでもありません。
半導体市場の継続的な拡大は、上図のような立方体の体積として説明できます。X軸は半導体の用途です。黒電話からスマートフォン、トランプからゲーム機、白熱電球からLED電球など、幅広い製品の進化が半導体の応用によりなされています。Y軸は使用人口です。一例を挙げれば、2005年時点での全世界のパソコン普及率※は約27%でしたが2019年では約50%と倍近くに増加しており、さらなる普及の余地があるうえ、世界人口増による需要の増加も見込めます。Z軸は世界景気です。当然この軸は好不況により上下動し、短期的には半導体市場もマイナス成長に転じることがありますが、底面(X軸、Y軸)の拡大が継続することで、中長期的には安定的な成長を続けています。
※国際電気通信連合(ITU)Measuring digital development: Facts and figures 2019 より
以前の半導体業界では「シリコンサイクル」と呼ばれる4、5年サイクルで繰り返す好不況の波があると言われ、実際にこのサイクルで業績が大きく変動することもありました。しかし現在では、電子機器のモデルチェンジサイクルが短くなったこともあり、1年の中での需要変動はあるものの、数年サイクルの波は見られなくなってきました。
他の業界同様、リーマンショックの様な世界的な景気変動の影響を受けるリスクは当然ありますが、中長期で業況を振り返れば、半導体業界もディスコも継続的に成長しています。今後も、好不況の波は受けつつもさらなる成長が期待できる要素は、数多くあると言えるでしょう。
ディスコの「高度なKiru・Kezuru・Migaku技術」は、半導体製造工程の中でも重要度を増しています。その要因についてご説明します。
5Gなど通信規格の進化、自動車のEV化、IoTの普及など、広い分野での電子機器需要の増加により、半導体の生産量は順調に増加しています。
スマートフォンやウェアラブル端末など、携帯したり身につけたりする機器には、より小さく薄く、強度の高い半導体が求められていることから、ディスコのKKM技術は重要度を増しています。
CPUなどロジックデバイスでは誘電率の低い絶縁膜の採用が、パワーデバイスではエネルギー損失の少ない炭化ケイ素の採用が進んでいます。こういった材料変更により、レーザソーなど新たなKKM技術の活用の場が広がっています。
電子機器のモデルチェンジサイクルが短くなるにつれ、使用される半導体は多品種少量生産になっています。そのため半導体チップを保護する封止工程では、金型に代わり、ダイシングソーが使われるようになっています。(コラム参照)
工業製品の世界では、ある種の「型」を使用して大量に加工する手法がよく採られてきました。例えば食品包装は「スタンプ」によって、消費期限や賞味期限を印字することがあります。しかし、法規制で印字項目を変える、年号表示を西暦表示に変えるなどの変更が必要になった際、スタンプは都度作り直さなければなりません。そのため、より自由度が高いインクジェットプリンタやレーザマーカの採用が進んでいます。
同様に、従来であれば「金型」を用いた樹脂成形(溶融した樹脂を流し込み成型する手法)に代わり、直接立体形状を形成する3Dプリンターも話題です。
半導体製造の世界でも、半導体チップを機械的・電気的に保護するための樹脂封止工程に「金型」を用いて、IC・LSIの形状を一つ一つ作っていました。しかしこの手法は品種変更に対する柔軟性が低いため、IC・LSI複数個分をまとめて樹脂封止し、ダイシングソーで切り分ける「パッケージダイシング」が近年は多用されています。
ディスコの装置は、設定次第でさまざまなサイズへの加工に柔軟に対応できる高いプログラマビリティもあるため、半導体製造プロセスの中でも活用範囲が広がっています。
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