TCFD

「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言に沿った情報開示

株式会社ディスコは、「気候関連財務情報開示タスクフォース(以下、TCFD)」の提言に賛同しており、 TCFD提言のフレームワークに沿って、事業活動における気候関連のリスクと機会を適切に評価し、積極的な情報開示を推進していきます。

※気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)について
G20の要請を受けて金融安定理事会(FSB)が2015年に設立した、企業の気候変動に関する情報開示および金融機関の対応を検討するタスクフォースです。企業に対し、気候変動関連リスク及び機会に関するガバナンスや戦略、リスク管理、指標と目標について開示することを推奨しています。

TCFD公式サイト:https://www.fsb-tcfd.org/


ガバナンス

当社は、気候変動問題を経営上の重要課題として認識しており、最高環境責任者である執行役常務を委員長、また代表執行役社長及び代表執行役副社長を委員とする全社環境委員会を設置しております。また、全社環境委員会には社外取締役がオブザーブ参加しております。
全社環境委員会は年2回定期的に開催し、中長期的な視点で事業活動に影響を与えるリスクと機会を洗い出し、評価、対策を審議しております。また、環境ビジョンなどの重要テーマ、重要なリスクと機会、また目標に対する進捗について、少なくとも年に1回、経営会議・取締役会に付議・報告しております。なお、本社及び全生産拠点に環境関連部署を配置し、関連施策を推進しております。

推進体制

推進体制

戦略

シナリオの選択と分析

主に、国際エネルギー機関(IEA)のWorld Energy Outlook及び気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書を参考にしております。

1.5℃シナリオ(NZE)

脱炭素社会を実現するための施策・規制が実施されることで化石燃料の消費が減少するとともに、省エネ技術の進展等により最終エネルギー消費全体が減少し、世界がネットゼロを達成するシナリオです。
その場合、電源構成における再生可能エネルギーが、2030年には約60%、2050年には約90%を占めるとされています。
このような状況において、2030年及び2050年の両時点で、各国政府の気候変動対策が強化されることで移行リスクが高まるものの、財務への大きなマイナス影響は生じないと評価しました。
一方で、脱炭素社会の実現のカギを握るのが半導体であり、その中でも省エネ・省電力化に寄与するパワー半導体の需要が大きく高まることが予想されます。半導体向けのソリューション(製造装置、関連機器、消耗品など)を網羅的に取り揃える当社にとって、長期に渡ってビジネス機会が拡大すると評価しました。
結果として、2050年に向けては、脱炭素社会への移行によるリスクより、パワー半導体の需要拡大などによるビジネス機会の方が大きいと評価しました。

電源別発電量比率(NZEシナリオ)

4.0℃シナリオ

規制が進まず、気候変動に起因する自然災害、例えば豪雨や洪水、渇水の激化や海面上昇などにより、物理的リスクが高まることが考えられます。
当社では、2003年より事業継続マネジメントシステム(BCM/Business Continuity Management)を導入しており、BCM専門の部署を設置し、自然災害を含めたあらゆる外乱の影響を排除し、事業継続力を高めるため、施策導入や設備増強を図っています。

リスク及び機会

今後の事業活動に、気候変動がどのような影響を及ぼすかについて複数のシナリオをもとにリスクと機会の検討を行いました。事業活動に与える影響度合いは「大」「中」「小」の3段階で評価しております。また、リスクと機会が発現する時期を、「中期」、「長期」の2段階で分類しております。

影響度

影響度 定義
事業が大きく縮小、拡大する程度の影響がある
事業の一部に影響がある
ほとんど影響はない、または軽微

リスクと機会の発現時期

時期 期間
中期 ~2030年            
長期 ~2050年            

主なリスク及び機会

要因 予測される主な影響 影響度
中期 長期
リスク 移行 炭素価格 炭素税や排出権取引により、製造/R&Dコストが増加
省エネ・法規制 再エネへの変換が求められ、グリーン電力購入等の対応コストが増加
部品・原材料
価格の上昇
電化・EV化に伴い、原材料(レアアース、アルミ等)の需要が高まり調達コストが増加
物理 異常気象の
激甚化
BCM対応や生産設備の復旧にかかるコストが増加
工場稼働率の低下による売上減少
調達遅延による売上減少
機会 社会的ニーズ デジタル技術による脱炭素化により、半導体の重要性が高まる
エネルギー効率化やEVシフトなどにより、パワー半導体の需要が拡大
顧客ニーズ 当社製品の省エネ性能向上により競争力が高まる
脱炭素ニーズに応えるソリューションの提供により、当社製品の競争力が高まる

リスクへの対応

  1. 全社省エネ活動の推進
    ディスコでは、カーボンニュートラルを目指した活動の一環として、各部門や各個人の省エネ活動の促進に取組んでいます。
    この取組みは全社を対象とし、各部門のエネルギー使用量(温室効果ガス排出量)に応じた削減目標が設定され、その達成度合いにより、ポイントが付与され、そのポイントが賞与に反映されるため、一人ひとりの行動変容が促され、活動が自走する仕組みとなっています。

  2. 創エネの積極導入
    ディスコでは、事業活動にともなう環境負荷を低減するため、本社・R&D センターをはじめとする国内外の各事業所・拠点に太陽光発電システムを積極的に導入しています。近年では 長野事業所 茅野工場に既存の140kWに加え最大1,054kWの発電能力を有する太陽光発電システムを設置し、合計1,194kWとメガワットクラスの発電が可能になりました。また広島事業所においても、呉工場及び桑畑工場にてさらなる増設(460kW)を行い、全社での太陽光発電能力が最大 3,323kW に達しました。

  3. カーボンニュートラルリテラシーの醸成
    ディスコでは、毎年社員の省エネリテラシーの醸成を目的とした教育を行っています。この教育は、社会情勢の動向や、脱炭素化に取り組まないことのリスクや取り組むことによって生まれる機会、省エネ活動による削減効果算出の方法等が含まれています。
    これらは社内のe-ラーニングシステムを用いて、国内外ディスコグループ全体で実施しています。

  4. カーボンニュートラル実現に向けた改善活動
    ディスコでは、カーボンニュートラルの実現に向けた対応を、自社がより強くなるための機会と捉えています。
    毎月開催される改善活動発表において、省エネ/カーボンニュートラルに関する改善もテーマとして取り組んでいます。また、この改善内容の発表は1分間プレゼンによる対戦形式で行われ、勝利によって得られるポイントが賞与にも影響を及ぼすため、社員の積極的な参加を促す仕組みとなっています。

  5. BCM対策
    ディスコでは、2003年より事業継続マネジメントシステム(BCM/Business Continuity Management)を導入し、2012年には日本で初めて同マネジメントシステムの国際認証規格(ISO22301)を取得しました。また、代表執行役社長をチェアマンとし、社内取締役で構成されるBCMコミッティを設置・運営するとともに、BCM専門の部署を設置しております。なお、BCMコミッティは毎月取締役会後に開催し、社外取締役がオブザーブ参加しております。
    当社では、自然災害を含むあらゆる外乱の影響を排除し事業継続力を高めるため、施策導入や設備増強を図っており、豪雨、渇水、高潮などの水リスクに応じた対策強化のため、防潮堤の設置の実施や、節水及び水リサイクル率の向上を目指し対策を推進しています。
    2018年7月の西日本豪雨では、当社の生産拠点である広島県呉市にも甚大な被害をもたらし、精密加工ツールを製造する呉工場においては、生活用水、工業用水ともに断水となったほか、周辺道路の寸断による物流の混乱等の影響を受けましたが、当社では日常的なBCM活動により支障なく供給責任を果たすことができました。

ディスコにおけるビジネス機会

世界各国において2050年までにカーボンニュートラルの方針が掲げられていますが、パワー半導体など、脱炭素に貢献するデバイスや製品の生産設備に対して投資減税などの優遇策が検討・実施されています。
当社は高度なKKM(Kiru,Kezuru,Migaku)技術によって、パワー半導体をはじめとするあらゆる素材、加工プロセス、デバイス向けに最適なソリューションを提供し、KKMに関する領域全般をカバーすることで、2050年に向けて拡大し続ける事業機会を余すことなく獲得できると考えております。

電力を供給・制御するパワー半導体は身近な家電製品からEV、さらには鉄道や送配電設備といった社会インフラに至るまで、あらゆる電気機器に搭載されています。
特に脱炭素社会の実現に向けて需要が拡大する太陽光、風力など再生可能エネルギーによる発電においては、パワー半導体により電力損失を低減することが重要となります。
このようにパワー半導体は脱炭素社会を実現するキーデバイスとして今後さらに需要が高まっていくと予測しています。

現在のパワー半導体はSi(シリコン)ウェーハを用いたものが大半を占めますが、EV(電気自動車)においてSiよりも物質特性に優れる炭化ケイ素(SiC)ウェーハを使った次世代のパワー半導体開発・採用が進みつつあります。
当社ではSiCウェーハ製造工程の生産性を大きく向上させるKABRAプロセスを開発、販売しており、今後さらに増大するSiC需要に応えていきます。

KABRAプロセス:レーザを連続的に照射することで、分離層(KABRA層)を任意の深さに形成し、このKABRA 層を起点に剥離・ウェーハ化するインゴットスライス加工。

Fully Automatic KABRA System
SiCウェーハ製造装置
Fully Automatic KABRA System

カーボンニュートラルに向けて(移行計画)

Scope1+2

ディスコでは、2030年にScope1+2のカーボンニュートラル実現を目指します。
まず、Scope1については、事業活動において化石燃料を利用する全ての機器・設備について、電化への転換とeフューエルをはじめとした代替燃料への転換により、化石由来のエネルギーからの脱却を進めます。

また、Scope2については、今後事業が成長してもエネルギー使用量を増加させないことを目指し、あらゆる省エネ施策を推進します。
更に、太陽光発電などの創エネ設備を積極的に導入していくとともに、購入する電力は全て再生可能エネルギーに転換することでカーボンニュートラルを実現してまいります。

なお、当社では、脱炭素社会への移行による事業機会の拡大に伴い、今後更なる成長を見込んでおり、成り行きのエネルギー使用量が増加する事が予想されます。また再生可能エネルギー価格の高騰などの可能性も踏まえ、エネルギー使用量については、最小限に抑える必要があると考えております。
そのため、全社員による省エネ活動、技術/工程の改善及び高効率設備への更新により、売上高当たりのエネルギー使用量の削減に全力で取り組んでまいります。

カーボンニュートラルの実現

Scope3

2050年にScope3のカーボンニュートラル実現を目指します。Scope3の排出量をゼロにするには、自社の取り組みだけでは難しく、広くお客様及びサプライヤーの皆様と協力しながら、ネットゼロに邁進してまいります。

  1. 購入する原材料・部品について
    ディスコが提供する精密加工装置、その消耗品である精密加工ツール及び機能消耗品(ケミカル品など)に投入される原材料・部品について、それらを製造する過程で生じる温室効果ガスの排出については、重要な課題と認識しております(Scope3 Cat1)。この課題への取り組みとして、調達品の排出量の把握促進、また低排出原材料・部品等の調達強化など、サプライヤー様との協力関係を構築しながら取り組んでまいります。

  2. 調達に関する輸送・配送について
    資材調達に関する輸送・配送における排出について(Scope3 Cat4)、調達先の主体は日本国内となりますが、モーダルシフトも含めたEV・eフューエル・水素などを使った次世代低排出輸送など、法整備や技術革新が進む中で新たに生まれるこうした優良な輸送・配送手段を積極的に選択していきます。

  3. 自社製品の使用に伴う排出について
    販売した製品の使用における排出(Scope3 Cat11)についても大きな課題と認識しています。
    ディスコでは、2004年より製品ライフサイクルの環境負荷が最小限となるよう、設計・開発指針であるグリーンプロダクトガイドラインを制定し、後継機種の開発においては現行機種よりも排出量を削減することを目指し、継続的な排出削減に取り組んでおります。
    製品が省電力で高効率であることは、従来よりお客様の重要な選択基準であり、製品販売における訴求ポイントとして認識しておりますが、今後脱炭素社会への移行が加速することで、その重要性がより一層高まっていくと考えております。そのため、更なるお客様の省電力化に貢献できるよう、製品の環境性能において業界トップクラスを目指し、全力で取り組んでまいります。

リスク管理

本社及び全生産拠点の環境関連部署が有機的に連携し中長期的な視点で事業活動に影響を与えるリスクと機会の洗い出しを行っております。この洗い出したリスクと機会に対処するため、影響の評価、対策立案、対応状況のモニタリングを全社環境委員会で行っております。また、全社環境委員会で審議されたリスクや機会は、適宜、経営会議・取締役会に付議・報告される体制を構築しており、リスク対策の管理体制の強化を図っております。

なお、物理的リスクについては、BCMコミッティにて、対策の立案及び対応状況のモニタリングを行っています。当社では、2003年より事業継続マネジメントシステム(BCM/Business Continuity Management)を導入しており、代表執行役社長をチェアマンとし、社内取締役で構成されるBCMコミッティを設置・運営しております。なお、BCMコミッティは毎月取締役会後に開催し、社外取締役がオブザーブ参加しております。

指標と目標

ディスコは、気候変動への対応を社会的責任と捉え、事業活動に伴う温室効果ガスの排出削減を行っています。2021年には新たな温室効果ガスの削減目標として、中長期目標を設定し活動を開始しております。

中期目標
『2030年度までに自社操業に関連する排出量(Scope1+2)のカーボンニュートラル実現を目指す』

長期目標
『2050年度までにサプライチェーン全体の排出量(Scope1+2+3)のカーボンニュートラル実現を目指す』

なお、製品使用時に排出されるCO2についても重要と考えており、CO2排出量削減に配慮した製品設計を目標とし様々な活動を推進していきます。

環境関連の活動とデータ

ディスコでは、持続可能な社会の実現に向けて、温室効果ガス削減や省資源活動、廃棄物削減などに取り組んでいます。
環境に関わるデータや具体的な取り組みについてはこちらでご覧頂けます。


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