人的資本戦略

戦略

基本的な考え方

当社グループの企業理念である「DISCO VALUES」マネジメントガイドラインズの「人的資源」という章において、“企業の実態をつくるのは、そこで活動する人であり、企業の質を決定づけるのは人的資源の質である”と明記しています。つまり、従業員はイノベーションを生み出し、顧客をはじめとする全てのステークホルダーとの関係性を構築する存在であり、当社グループの持続的な成長を支える、きわめて重要な資本であると定義しています。そして、一人ひとりが能力を発揮するための人的資本への投資は、長期的な企業価値向上のための投資であると考えています。
また、当社グループの事業を取り巻くハイテク業界は変化が激しく、組織としての「変化への対応力」の強化が重要と捉えています。そして、その原動力となる従業員にも「進化する力」を求めています。
「DISCO VALUES」では、進化という言葉を「強くなる、より良くあるために変化すること」と定義しています。この進化力によりKiru・Kezuru・Migaku技術をより高度なものとし、顧客の課題を解決し、競合他社に対する優位性を確保することを目指しています。

i ) 従業員満足志向(Employee Satisfaction Oriented)
従業員の進化を促進し、会社と従業員との価値交換性を高めるための土台づくりとして、従業員の働きがい・働きやすさ・健康を重視するマネジメントを行っています。
ii) ES(従業員満足度)調査
従業員満足志向を重視したマネジメントのモニタリングのため2003年よりES(従業員満足度)調査を実施しており、調査で得られた従業員満足度を人的資本戦略上の重要指標として位置付けています。
ES調査は100を超える設問を設定する年1回のES本調査、40を超える設問を設定する年2回の簡易ES調査の年間計3回実施しています。従業員は、5段階評価で各設問に回答し、その集計結果は、執行役で構成するESコミッティにおいて報告され、改善点やリスクの芽が見つかった場合は、その場で対策を議論しています。
図表1は、ES調査の結果と連結業績の推移です。ES調査の結果は、ES本調査の設問「当社で働いていることに満足している」への肯定回答率を表しています。永年の従業員満足を土台とする人的資本戦略が事業の成長と近時の好業績を支えています。

■図表1 連結売上高、連結経常利益率と従業員満足度(ES)調査の結果

連結売上高、連結経常利益率と従業員満足度(ES)調査の結果

施策と方針

従業員の働きがいを高め、「進化」を促すための戦略を以下の主要な施策や方針によって構成しています。

関係の質向上(信頼関係重視)

当社グループは、従業員同士の関係性(関係の質)が良好であってこそ業務上のアウトプットの質の向上に繋がるという考え方を大切にしています。従業員満足度を高め、各従業員の意志や自由を重要視する当社グループの人的資本戦略が狙い通りに機能するためには、この関係の質、すなわち従業員同士の信頼関係の構築が重要と考えています。
この考え方を働きがい向上のためのプログラムや、新人研修等への教育体系に組み込み、従業員の理解を促しています。加えて、職場内での雑談やランチ会奨励など人間関係・信頼関係構築のための各種プログラムに時間的・資金的投資を行っています。

Will経営(従業員一人ひとりの意志を反映させるための仕組み)

当社グループは、業務選択の自由、異動配属の自由、勤務事業所の自由選択等、従業員の内的動機すなわち、「こうしたい」という自己の意志(Will)に基づき働き方を決定できる制度を構築しています。

<個人will会計> 
Willという名前の社内通貨を用いて業務やサービス、備品等を全て金額換算し、収支を管理する当社グループ独自の管理会計を運用しています。この制度の下で、従業員は、自分のやりたい開発や業務に従事し社内通貨Willの収入を得ます。また、Willを支払うことにより、役職等の権限を有していなくても他者に業務を依頼することができます。この管理会計では一人ひとりの業務上のパフォーマンスが収支として定量的に見える化されるため、自己のパフォーマンスを客観的に把握することができます。
また、この制度のもとでは、上司からの業務命令による業務の割り当て等の一方的なマネジメントは極力排除され、従業員同士の合意形成があってはじめて業務が行われます。これにより、従業員に、同僚との関係性や自己の信頼を意識させ、成果や他者からの評価に向き合うことが促されます。さらに、業務上のミスや開発の失敗に対しては、上司からの叱責という形ではなく、個人Will会計上の損失という形で責任を取ります。これにより上司からの過度な叱責によるモチベーション低下や信頼関係の棄損等を防ぐことができます。一方、成果はWillの収入という形で現れ、個人Will会計上の収支は自身の賞与に反映されます。
さらに、会社が推進したい施策も、業務命令という形ではなく、より多額のWillが得られる仕組み等の個人Will会計を活用した動機づけによって推進されます。また、社長タウンミーティングや部長タウンミーティング等で発信されるオピニオンへの共感という形で、各自が納得することによって一人ひとりの行動を誘因するマネジメントを実施しています。

<キャリア・教育プログラム>
従業員自らの強い意志(内的動機)が個性や能力を発揮させるとの考えと、個人Will会計のもとで、自分の意志でキャリアデザインする「選択と自己責任によるキャリア形成」を基本方針としており、それを可能とする制度を整備しています。
(主な制度)
・個人Will会計 やりたい業務にチャレンジし、経験を積み、スキルを磨きます。
異動の自由 自己のキャリアデザインのために部署異動を希望する場合は、自分で、所属したい部署と交渉し合意形成ができれば異動することができます。その際に、現所属部署は慰留することはできますが、異動を拒否することはできません。
アプリケーション大学 新卒総合職入社者は、新人研修後に「アプリケーション大学」に配属されます。主に、当社製品の装置と消耗品を組み合わせ最適な加工条件を導き出すアプリケーション技術を学び、複数の卒業要件を修得しながら、将来の配属先を探します。具体的には、個人Will会計の下、各自が能動的に各部署にコンタクトを取り、複数の部署の業務に従事しWillを稼ぎながら、興味のある部署を見つけ、部署との合意形成ができれば、その部署に配属となります。
・研修制度 新入社員研修や階層別の研修のほか、オンデマンドeラーニング600種類以上、対面・ウェビナーでの研修400項目以上を整備しています。これらはWillを支払うことにより自分が受講したい研修を自由に受講できます。支払われた受講費は、研修を開発・実施する従業員のWillの収入となることから、より受講される研修を目指し内容をブラッシュアップするため、質の高い社内教育の提供に繋がっています。

このように、Will経営のもとで従業員の自由な意志表示を可能とすることにより、イノベーションの促進、生産性の向上、人財の配置などを全体最適に導いています。さらに従業員満足や仕事へのモチベーションの向上、成果発揮や自身のキャリア形成における自律性や自責思考を促す企業文化を形成しています。

PIM(Performance Innovation Management)

2003年から実施するPIMと称する改善活動は、日々の業務を良化し生産性を高めるだけでなく、製品・サービス面における進化・改善のための能力向上を促すものです。PIMでは、職種や雇用形態に関わらず全従業員が取り組み、かつ内的動機によって取り組むための仕掛けを講じています。
PIMでは、改善の発端となる作業の面倒さ、顧客が抱える問題等を「気づき」として日々データベースに蓄積し、これを基にしたメソッドチェンジ(業務の進化・改善)を行います。その対象は、事務作業の効率化から新しい技術開発まで多岐に亘ります。
また、より良い改善をすると多額のWillを得ることができるといった、個人Will会計の活用でPIMに対する従業員の内的動機づけを誘引する仕組みを構築しています。
このPIMには時間的・資金的に投資をしていますが、日々従業員に課題解決思考を促し、改善を積み重ねることにより、進化やイノベーションを生み出しやすい文化を醸成し長期利益の最大化を目指しています。

内製化・手作り一級

技術部門、製造部門に限らずあらゆる部門において、製造設備や重要部品、ITシステムなどを可能な限り内製する方針です。これも、変化への対応力を高めるための事業戦略であると同時に、従業員の進化力を育てる人的資本戦略でもあります。
内製の推進によって従業員が新たな業務領域に挑戦する機会を創出でき、社内にノウハウが蓄積します。さらに、内製した設備等に改良を加える場合も自社でスピーディに行うことが可能となります。加えて、製品・サービスにおいて自社対応できる範囲が広がるため、顧客からの要望に柔軟かつ迅速に対応可能となり、顧客満足にも繋がります。
内製は前記のPIMと相互に作用し合い、従業員の進化力を高め、その進化力が次の改良を加速させるという好循環を生み出しています。

報酬・採用

当社グループは、事業戦略上の重要指標として経常利益率を採用しています。連結経常利益率への連動を執行役の賞与だけでなく当社の従業員の報酬にも適用することにより従業員に重要指標を意識させるマネジメントを実現しています。さらに、この連動により固定費増の回避と高収益を背景とした日本トップクラスの報酬実現との両立を図っています。
業績に連動した従業員への積極的な還元は、エンジニア等の一部の従業員だけでなく、間接部門や製造現場である広島・長野事業所の正社員及び契約社員にも適用しており、一部のメーカーに見られる人件費のローコストオペレーションを目的とした製造機能の分社化方針は採用していません。当社は、ものづくりの真髄が製造現場にあることを強く意識し、製造現場も含めた全社共通の人事制度と報酬体系によって、採用競争力を高め、人財の確保とリテンションに努めています。
また、報酬体系は、前記の個人Will会計とも紐づけられており、個人Will会計上の収支は賞与配分に連動しています。よって、顧客や同僚等とより多くの価値交換を行い付加価値の高い成果を生む従業員に多く賞与が配分される仕組みとなっています。
同時に当社グループは、ディスコの価値観に共感、共有し、実践する人々で構成された集団であることを重視しています。採用段階において、「求める人材、求めない人材」「従業員の退職理由」等の情報を積極的に公開した上で、当社グループの価値観に共感できるか否かを入念に確認し従業員の価値観の一致に努めています。

各施策と方針の相互作用

前記の各施策と方針は、相互に作用し、推進し合う循環を生み出し、当社グループの人的資本戦略の実効性を高めています。(図表2)

■図表2 当社グループの人的資本戦略
当社グループの人的資本戦略
■「DISCO VALUES」(抜粋)

下記に2002年に制定した「DISCO VALUES」マネジメントガイドラインズの「人的資源」という章の一部を記載しています。

  • 個々の能力は他との有機的な関わりによって、より大きな力になる
  • 自らの意思で動くとき人は最大の力を発揮する。 ディスコは個人の意思の発露を大切にする
  • 個性や能力の発揮は社員自らの意思にかかっている。ディスコはその意思や意欲を応援したい
  • ディスコはディスコの一員としてふさわしい人が、いつまでも活躍できる環境を整えていく
  • 人生観・家族観など、個人としての価値観はさまざまである。 企業も個人もそういった個の領域においては互いに干渉しない
  • ディスコはセクシュアリティ、年齢、国籍、人種、宗教、学歴など、 その人の属性による差別も評価もしない

マネジメントガイドラインズの「人的資源」以外の章についてはこちらをご覧ください。

指標と目標

人的資本を含めたサステナビリティに関する重要課題及びトラッキング指標と目標は、こちらをご覧ください。

人的資本関連データ


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